ぷろまねさん

グローバルコンサルティング会社でシステム開発・運用保守(アプリ方面)のプロジェクトマネジャーをしています。2014年PMP取得。アジャイル開発などの開発手法、Redmineなどの開発ツールを話題の中心に書いてます。

アイディアの育て方(バンドマンの曲作りを例に)

アイディアを生み出すということが、ビジネスにおいて昔よりも比重が大きくなってきている。これはIT技術の進化によってシミュレーションなどの方法が次々と確立され、実験コストが飛躍的に低下したからだ。

そんなアイディアを生み出す伝統的な方法がブレスト、すなわちブレーンストーミングである。すこし前にこんな記事もあったが、僕もこの意見に賛成で、ブレストからは大したアイディアが出ることはないと思っている。

ブレストの欠点

まずはブレストの欠点を出しておこう。複数人で議論していることで決定的に問題なのは各人が他の人の議論に惑わされて「深い思考」が出来ないことだ。色々な人が色々な角度から話をするので、話題が分断されある一点を掘り下げるということが出来ない。

この点は更にもう一つの欠点を招く。各人は深く掘り下げた思考が出来ないため、例えいいアイディアがあったとしてもそれに自信が持てない。いいアイディア、すなわち新規性・革新性があってかつ価値があるアイディアというものは、その新規性が故にパッと思いついただけでは「本当に価値があるのか」「実現可能なのか」などというところまでは判断出来ない。ブレストの原則として「他人の意見を否定しない」ということを頑なに守ったとしても、そもそも各人が自信が持てないようなアイディアを口に出しにくいはずだ。

これはビジネスではなく、以前に僕がバンド活動、音楽活動を行っていたときに思ったことだ。

バンドでの曲作り、といって(特にそのような活動を行ったことがない人からすると)どういった過程を思い浮かべるだろう?ギターがリフ*1をなんとなく弾き始め、それにドラムやベースが合わせてだんだんとリズムとグルーヴが出来上がる。それを聴きながらボーカルが歌詞を書きながら最後に歌を乗せる、というような感じじゃないだろうか*2。この「何となく出来上がっていく」というのがバンドがバンドとして曲作りしている、という感じではないだろうか。

しかし、残念ながらこのような曲作りで名曲を作れるのはいないとは言わないまでも、ほんの一握りしかいない。それこそ十年単位で一緒にやっているメンバであれば出来るかも知れないが、これから活動を始めようとしているようなバンドでは絶対に無理だ。

このような場合「芯」がない、というか「芯」をメンバが見えない状態になっている。曲のテーマは何か、良さは何か、新しさは何かといったところが曲自体が未完成な状態では伝わってこない。これは最初にリフを弾き始めたギタリスト(でなくても構わない、最初に弾き始めた楽器)でも分かっていたり分かっていなかったりするはずで、最終形としてどういった形になるべきかは絶対に分かっていないはずだ。そういった「芯」が見えない状態で始めると、みんなが他のメンバの様子を伺って「なんとなく」合わせているだけになってしまって面白みのない曲にしかならないのだ。

まずはひとりで

それよりも、まずは納得いくまで一人でアイディアを煮詰めるほうがいいものが出来る、と思う。一人で煮詰めて自分が「最終形」と思うところまで形にする。

ここで「掘り下げ」が出来る。最初のアイディア、ビジネスで言えば妄想レベルの「こういうのどう?」といったこと、曲作りで言えば最初のリフなんていうのは何となく夢想していたり、何となく楽器をいじったりしていれば1つ2つ思いつく。それを最終形にしていくのが時間の最もかかる作業だし、集中しなければならない作業なのだ。それを多人数で30分や1時間の間にしろ、というのは無理な話だろう。

名を残しているクラシックの作曲家たちは大勢で集まって作曲しただろうか。そうではなく、ほとんどの楽曲は作曲家が一人で書き上げたものばかりだ。センスや技術を研ぎ澄まして結晶化させる、ということには一人での作業のほうが向いているということは、この歴史が教えてくれている。

ようやく出来上がった「俺的最終形」を、まずはメンバに聴かせる。どういった展開をしてどこで何を一番聴かせて、それらを総合してどういったテーマなのか、その時点になったら語れるようになっているはずだ。

最後に周りが磨く

もちろんギタリストは他の楽器が上手いとは限らないので、自分が思う最終形を作ったとしてもドラムのフレーズはダサダサ、ということもあるだろう。

しかし上記のように「俺的最終形」を聴かせられた時点であれば、各パートのメンバは「だったらここはこういうフレーズのほうがいい」という提案が出来る状態になっている。これは「俺的最終形」を聴かせられない、ただ断片のみ披露された時点では出来ない。なぜならばどういう曲かが(他のパートは拙いなりに)見えているから。

もちろんここで「そんな曲俺はやりたくない」というメンバも出てくるだろう。これ今回の「アイディアの育て方」という話とは別なので割愛する。

*1:曲のテーマとなるキャッチーな繰り返しのフレーズ

*2:ここまでイメージ出来ていたらバンド活動していた人に違いないけど