ぷろまねさん

グローバルコンサルティング会社でシステム開発・運用保守(アプリ方面)のプロジェクトマネジャーをしています。2014年PMP取得。アジャイル開発などの開発手法、Redmineなどの開発ツールを話題の中心に書いてます。

プロマネが声をかけるとき作業を邪魔してませんか?

プロマネの仕事は(デマルコ先生あたりの教義に沿えば)メンバが気持よく作業に集中出来る環境を整えることだ。当然しっかりと進捗管理などを行ってプロジェクトの最新状態を常に可視化しておくことも重要だが、それをするためにメンバの邪魔をして進捗を遅らせていては本末転倒である。

そのため、「如何にメンバの邪魔をせずに必要な情報を引き出すか」はプロマネにとっての重要な技能の1つ*1だと僕は思う。

ということでこれに役立つテクニックのうち「声をかけるタイミング」についてまとめてみた。プロマネ視点ということで対チームメンバを想定しているが、声をかける相手が顧客だったり上司だったりしてもほとんど同様なので適宜読み替えてほしい。

誰かに話しかけるとはどういうことか

誰かに話しかけるということは、相手の作業を一時中断させるということである。これは直接面と向かって話す場合でもそうだし、電話をかける場合でも同様だ。そして人それぞれだが、話しかけられた相手は通常、会話によって一時中断された作業に戻るにはそのための余計な時間がかかってしまう。

また誰かと話しているところに割って入って声をかけられたり、あるいは会議に出席している人の電話が鳴って会議が中断したりするようなことは経験したことがないだろうか?この場合話しかけられた人のみならず、その2倍〜参加人数倍の人の時間を無駄にしていることになる。これは作業中断時の時間の無駄だけを取っても勿体無い。

誰かに話しかけるということは必ず相手の時間の犠牲を伴う行為である。そのため、誰かに話しかける場合にはその犠牲を最小限にするように意識する必要がある。

話しかけていけないサイン、いいサイン

ではその犠牲を最小限にするために、話しかけるタイミングを見計らおう。そのためには前述のような過ちを犯さないために「誰かと話しているところには極力割り込まない」だとか、「可能であれば電話するときには相手が会議中でないか事前に確認する」といった点に注意すべきだ。

その上で、相手が一人で机に向かっているときに話しかけたいというケースを想定する。そういった場合でもむやみに話しかけてはいけない場合もある。それを判断する以下の様な「サイン」を相手は示しているはずだ。

<話しかけてはいけないサイン>

  • PCに向かって一生懸命タイプしている
    ⇒ これは資料作成をしていたり、コーディングをしていたり、アウトプットに集中している状態である。アウトプットというのはいつでも気軽に出来るものではない。気分も乗らなければいけないし、閃きも必要になる。そのような状態を中断させるのは非常に非効率的であるので、極力話しかけてはいけない。
  • PCに手をつけずにいる、画面をじっと見つけている、変な方向をずっと向いている、(寝ているわけではないが)目をつぶっている
    ⇒ これは頭の中で考え事をしている状態である。無数の暗黙的な情報をつなぎ合わせてアウトプットに結びつけようとしているときであり、このようなときに割り込みが入るとそれまでの思考は霧散してしまう。話しかけやすいように一見見えるが、一番話しかけてはいけない。

<話しかけていいサイン>

  • マウスに手をかけホイールしている、溜まったメールを読んでいる
    ⇒ これは断片的な情報をインプットをしている状態である。このタイミングで深い思考をしていることは稀であり、このような作業を中断しても大きなインパクトはない。こういったときに話しかければ、相手も比較的愛想よく応対してくれるだろう。

タイミングを見計らうには余裕が必要

しかしこのようなサインを見極め話しかけるタイミングを見計らうのは、あくまでその内容が緊急でないときだ。当然緊急度の高い内容であれば、いくら話しかけてはいけないサインが出ていたり、誰かと話していても割り込んで話しかける必要がある。

だがそもそもそのような緊急のコミュニケーションを要するようなことを発生させないことがプロマネとしての腕の見せどころではないか。常にプロジェクト内外にアンテナ高く周りを見渡し異変を早期に検知・対応することで大抵の急を要するコミュニケーションは不要になるはずだ。その上で話しかける必要ができたら、すぐさま話しかけるでもなく、そのデッドラインギリギリまで待ってしまうでもなく、「話しかけていいタイミング」を見計らって話しかければ良い話だ。

そもそも話しかけることが必須か?を判断する

さらに「話しかけなければならないのか」も見極めたほうがいいだろう。直接の会話によらずとも、相手の都合の良いときに見てもらうことが可能なメールやチャット、あるいはポストイットへのメモ書きで代替出来ないかを考えてみたほうがいい。

出来れば話したい内容であっても、上記の「話しかけてはいけないサイン」がずっと続くようであればコミュニケーション手段を切り替えるというのもひとつの方法である。

とはいえ「なんで近くにいるのに話しかけてこないの?」と思う人も少なからずいることにも注意し、メール等の手段に過度に依存しないことも心がける必要がある。また、特にメールの場合は文面を推敲出来てしまうが故に直接の会話よりも自分の時間を多く使ってしまいがちである。自分の時間と相手の時間のそれぞれを尊重し、適切なコミュニケーション方法を採用することが肝要だ。

気にしすぎ?

ちなみにこの話、僕のプロジェクト内で若手向け勉強会のネタにしようと思っていたのだが、僕の担当分のレビュワーになってくれている先輩マネジャーからは「こんな細かいこと気にしたことないよ」ということでボツにした。その方が特段大雑把なほうでもないし、むしろ非常に信頼のおける方であるので、一般的なマネジャーからするとここまで気を配るようなことでもないのかも知れない。しかし僕の経験上これを意識したことによって、特に偏屈気味な開発者の人々と良い関係に転じることが出来たので、無駄ではなかったと思っている。

 

ピープルウエア 第3版

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マネジャーの実像

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*1:ミンツバーグがマネジメントに必要なスキルを「アート」、「クラフト」、「サイエンス」の3つに分けた中で言えば、これはクラフトに分類されるだろう。