ツールの導入にはメンバのコミットメントが必要:『チーム開発実践入門』を読んで
Redmineを導入しようと色々と調べているうちにアジャイルやDevOpsといった文脈でソフトウェア開発を効率的に行う、その品質を向上させるためのツールがずいぶんと揃ってきていることを知れた。それらの多くはOSS(オープンソースソフトウェア)なのでインストールするサーバさえあれば原則コストフリーで導入出来てしまう。
これは導入を検討してみるしかない、ということでその辺りのツール群が体系的にまとめられているものはないかな、ということで行き当たったのが本書である。
ちょっと書名が分かりにくくないかな?読んでみると確かに適切なタイトルなのだが「チーム開発」という言葉からはチームビルディングや(もっとソフトな意味での)コラボレーションなどの印象を受ける。
ケーススタディ
第1〜2章は導入部となっていて、本書のスコーピングと、「ダメプロジェクト」の事例紹介(ケーススタディ)から始まっている。こういった失敗例としてのケーススタディってなかなか難しくって、あまりにイケてなさ過ぎる事例を出してしまうと「さすがにこれはありえないだろ」と読者が引いてしまうし、とはいえあまり良い感じにしてしまうと失敗例にならない。個人的には障害管理がメールではありえないだろ、さすがにエクセル管理くらいはしてるだろ、と思ってしまったが、良く考えれば一昨年サポートに行った炎上プロジェクトでは確かにそれさえも出来ておらず、そこにエクセル管理を入れることだけのために僕がいたことを思いだした。とするとこの例はあながちありえないケースでもないのかも。
記載のメッシュ
ケーススタディに続き、以下の4領域について説明が続く。
- バージョン管理
- チケット管理
- 継続的インテグレーション・継続的デリバリ
- リグレッションテスト
上記4つの領域について具体的なソフトウェア名とそれがどう使えるかをざくっと把握し、チーム開発ツールとして今何が揃っているのかを知り、自分のプロジェクトであったらどう使えそうかを考えるきっかけになる本として、現在ほぼ唯一日本語で読める良書だろう。
一方で、具体的なインストール手順やカスタマイズ方法などが書面の半分程度を占めている印象だが、概要を知るためにそれらの情報は必須だろうか。実際にインストールやカスタマイズを行うときはどうせツール個別の書籍や情報にあたるものじゃないかな?そのときに本書を開くとは思えないので、じゃあなんでここに書いてあるのかと思うと意味が無い気がする。
そういった内容よりももっと、どういったことがこれらのツールによって可能で、そのときにポイントとなることは何で、こういった解決策が考えられるといった内容を充実させてくれれば、(もしくはそういった内容はすでに書けているのでもっと薄くしてしまったほうが)良かったのにと思ってしまう。
でもこれはもしかすると非技術者な僕から見たときの視点であって、開発者の人からすると、何が出来る、どう使えるみたいな話だけだと「地に足がついていない」と評価するのかな?
ツール導入に大切なこと
さて、こういったツールの導入で大切なのは、本書でも何度か出ている通り「使用するメンバが使う意味を納得すること」だと思う。
そのために一番良いのは、開発者側から自然と「このツール使いたい!」という声が挙がって、草の根的にツールが浸透していく場合。逆に残念なのはトップダウンで「このツール使え」とだけ降りてきて結局「使う」事自体が目的化してしまう場合。
実は昨年くらいにそんなトップダウン型でテスト自動化ツールを我々のチームで試験導入してみようということになったのだが、完全に失敗した。というより失敗”させた"といったほうが正しい。導入推進している人たちもイマイチであったものの、何がダメだったかというと我々のチームがそのツールを入れるメリットを感じていなかったからだ。ツールの得手不得手も分からない状態で渡され使えと言われても、「こう使ったら我々のチームで効果的に使えるんじゃないか」という発想には至らない。結果、我々のチームに「テスト自動化アレルギー」を残しただけになってしまった。
そのようなことがあったので、現在実施しているRedmine導入ではチームメンバへの浸透を第一に考えている。本当は草の根的に声が挙がって使い始める形を取りたかったけれど、ちょっとそれは難しそうだったので推進は僕がやることになってしまったが、「Redmineを入れることで現場的にどういった効果が見込めるか」といった面や、「そもそもOSSとか使って新しい開発手法試してみたくない??」って若モノの心を揺さぶる方向で攻めている。これが実を結ぶかはこれから次第なので、また導入&運用開始後に判定してみたい。
チーム開発実践入門 ~共同作業を円滑に行うツール・メソッド (WEB+DB PRESS plus)
- 作者: 池田尚史,藤倉和明,井上史彰
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2014/04/16
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