部下への指示の仕方とそのジレンマ
今日、下記の記事を読んでいた。
あなたは、どう考えるの? : タイム・コンサルタントの日誌から
この方の文書は示唆に富んでいるのでRSSで購読している。今回の内容はというと、部下が上司に何か聞きに来ても、すぐに答えを出してあげるのではなくて「あなたは、どう考えるの?」と思考することを促す、それによって部下に一段上の視点を持たせる、というもの。
至極もっともだと思いつつ、昨日友人とほぼ同じ話題についてもう少し突っ込んで話していたのでそれをまとめておきたい。
部下の4分類
「もう少し突っ込んで」というのは、「いつでも『あなたは、どう考えるの?』という聞き方が最善だとは限らない」ということだ。
僕は、接する部下によって指示の仕方は変えるほうが良いと思っている。その部下の分類の仕方の1つとして、以下の「頭が良い・悪い」、「ガッツがある・ない」という身も蓋もないやり方が考えられる。
まず右上、頭も良くガッツもある部下。期待通りにアウトプットをしてくれ、少し無理をお願いしても難なくやってくれる頼りがいのある部下だ。しかし当然ながらそのような部下に恵まれることは少ない「貴重な人材」だ。
左上は頭は良いがガッツがない部下。自分の仕事が出来ていれば問題ないだろうと勤怠も悪い。下手をすると「その仕事なんで僕がやらないといけないんですか?」と突っかかってくる危険な存在、「ひねくれ者」だ。
右下は頭は良くないがガッツのある部下。頑張っているのは目に見えて分かるがイマイチ成果に結びつかない、だけど何故か憎めない「愛されキャラ」。
最後の左下は頭も良くなくガッツもない部下。上司がどうしたもんか、と頭を抱えてしまう「残念な子」である。きっと他の場所に彼(彼女)が活きるところがあるに違いない。
考えさせ方
先ほどのマトリクスにそれぞれの類型の部下たちに適切な指示の仕方をマップしてみた。
「貴重な人材」は自分で考える能力もあるし、それを実際に行う気概もある。それに対してあまり多くを言ってもモチベーションを下げるだけである。「あなたは、どう考えるの?」と言わずとも考え始めるようにそれとなく仕向けてあげるほうが良い。最低限の指示を出して好きなように動いてもらう、途中での軌道修正も必要な時だけにしてやれば順調に事を進めてくれるだろう。そして、進めていく中で自ら教訓を学び取っていく。
「ひねくれ者」に対しても、「あなたは、どう考えるの?」と言うのは少しリスキーかも知れない。プライドの高い彼らは自分がバカにされたと勘違いしてモチベーションを大きく下げる可能性がある。彼らに対しては「僕は○○だと思うんだけど、どうかな?」と先に自分の意見を伝えて意見を求めてしまったほうが良いように思う。考える能力はあるし自分の頭の良さを示したい欲求もあるので、それに対して自分なりの意見を伝えてくれるだろう。そこにまだ若手なりの拙さがあれば、それを論理的かつやんわりと指摘して向かうべき方向に誘導していくほうが彼らは育てやすい。
「愛されキャラ」には前述の「あなたは、どう考えるの?」が有効だろう。彼らはまだ考えるクセがついていないが、仕向けてみればちゃんとやってくれるバイタリティはある。彼らを指示待ち人間にせずに戦力にするには上記の問いかけを根気強く行って自分で考えるクセをつけさせなければいけない。ただし、言い方によってはパワハラになる可能性が高いので気をつける点でもある。
「残念な子」に対しては残念ながら基本的にどうしようもない。「あなたは、どう考えるの?」という問いかけは彼(彼女)らには響かず、仕事が遅々として進まなくなるだけだ。そもそもそんな子が長く居続ける可能性も薄いので、育てる労力も無駄になってしまう可能性も高い。それであれば単純な労働力と見て、細かい部分まで上司から指示を出して動いてもらうほうがいいだろう。また、仕事とは別の場所でどうにかモチベーションを上げてあげるような対策を打ったほうがいいかも知れない。(ただそれは先に「ひねくれ者」に対して行うべきだが。)
ジレンマ、実践出来ない理由
といった感じで、それぞれの部下の類型によって採るべき指示出し方法を変えた方が彼らのパフォーマンス、また彼らの成長度合いは変わるはずだ。ではそれぞれに合わせてやり方を変えればいいかと言うと、これがまた難しい。
何故なら、自分の下に別々の類型の部下がいる場合に如実に接し方を変えてしまうと差別しているように見えてしまうからだ。「AさんはBさんに対しては丁寧に教えているのに自分には何も教えてくれずに突き放される」という風に。それが分かっているので、接し方を変えたほうが良いことが分かっていても出来ない、ジレンマが発生する。
これを克服するのは難しいが、ひとつの方法はそのように感じさせない程度に接し方を変える度合いを薄めるか、あるいは接し方を変えている背景を部下に個人的に伝えてみるというのもひとつの方法だろう。これに対しては僕はまだ正解が分かっていない。もっといい方法もあるはずなので引き続き考えながら接していきたい。