飽きると勝手に越境する
DevLOVE Advent Calendar 2014の12/5分の記事です。「越境」というキーワードで1日づつ様々な方が記事を書くというシリーズです。12/4はギルドワークスの@yohhatuさんの「ええやん」と思ったらやっていこうでした。こちらの記事を読む前に以下の下書きをしたのですが、読ませていただいたら「あ、なんか同じこと言ってる。。。」となりました。かなり自由度の高いテーマの中、偶然ですね。
自己紹介
グローバル総合コンサルティング会社にてシステム開発・運用のプロジェクトマネジメント、サービスマネジメントを主に行っています。自チームでのRedmine導入を始めてから、もっと楽しく効率よくソフトウェア開発をしていきたいなと思い、最近アジャイル・DevOps関連の勉強中です。
自分にとっての越境
つい先日、やっと肩書きもマネジャーになりました。おめでとうございます、ありがとうございます。これもひとつの節目、ということで越境かと。
越境、すなわち境界を越えるということですよね。境界、境い目を作るというのは人間があるものとあるものを識別するために設定した恣意的な行為です。本来境界などというものは自然界には存在しない。例えば国境なんてものは人間がそこに線を引かなければ存在しないのです。さらに陸と海の境界線も、絶え間なく動いているものですし、砂と水が混ざり合っているので1ピクセルの線で厳密には引くことはできないです。
何が言いたいかと言うと、境界線によって設定される領域などというものに本来意味はなく、色んな場所に散らばっているものを如何に有機的に結びつけて新しいもの、価値のあるものを作り出せるのか、ということが重要なんじゃないか、ということを以下で語ってみます。
スペシャリストとジェネラリスト
スペシャリストとジェネラリストという対義語があります。特定の領域に造詣が深く専門的職能を使い活躍する人をスペシャリスト、各方面に広く浅い知識を持ちそれらを組み合わせて活躍する人をジェネラリストというのが一般的な認識でしょう。
マネジャーという仕事はジェネラリスト職と言われます。チームメンバの成果や意見をまとめ、色々な顧客や上位マネジメント層と折衝する、確かにジェネラリストっぽいです。
しかし一方でスペシャリストとしての性質も有しています。プロジェクトマネジメントで言えばPMBOKでまとめられているような知識セットがあり、EVMやクリティカルパスメソッドなどのツールなどを有効に使えば、プロジェクトマネジメントという領域で効果的な価値を生み出すことが出来る(はず)です。究極のプロジェクトマネジャーは果たして、ジェネラリストでしょうかスペシャリストでしょうか。
この問いに対するヒントは確かトム・デマルコ『ピープルウエア』にありました。記憶ベースで記載するので正確ではないかも知れませんが、「軍隊の優秀な指揮官を教師にすれば非常に良い教育が出来るはずだ、という人がいる。しかしそれに対しては『では、優秀な教師を指揮官にすれば非常に良い軍隊になるのか?』と問えば良い。」という内容です。すなわちデマルコが言いたいのは軍隊と教育機関、それぞれには別々の背景・文脈があるので普遍的に通用しうる管理・指導などというものは存在しない、ということだと思います。
プロジェクトマネジャーはPMBOKなどの知識をベースにしながら、業種や状況を踏まえて取捨選択、カスタマイズした管理を行わなければいけません。そのために業務知識や技術知識、財務やヒューマンリソースに関する知識、コミュニケーション能力など幅広い知識・能力を持ち合わせていなければならないという意味でジェネラリストなのでしょう。
では一方で一般にスペシャリスト職と言われるような職業ではどうか、自分の専門領域だけの知識を日々積み重ねていけば良いのかというとそうではないでしょう。結局自分の専門以外の領域の知識を仕入れ、専門領域と組み合わせない限りは新しいもの、価値あるものを生み出すことはほとんど不可能に近いです。
結局ジェネラリスト職、スペシャリスト職などという区分も程度でしかなく、自分の職種に依らずどこまで自分の専門領域を深掘るべきか、どこまで手広く知識を付けるべきかというバランスを自分で取らなければなりません。
飽きると勝手に越境する
では何を以ってそのバランスを見極めれば良いのでしょう?個人的に最近勝手に思った(というか思うことにした)答えとしては「自分が飽きたかどうか」でいいんじゃないかということです。
世の中にはひとつのことにひたすら傾倒してその道を極めるような人もいます。僕の会社にもSAP社のソリューションについて唯一無二の知識を持っていて、何かSAPソリューションで課題が発生したらとりあえずその人に聞いてみよう、なんて人もいます。
それに対して僕の場合は飽きやすい。その時々でなんとなくテーマはあるんですが、読む本のジャンルがコロコロ変わります。ここ2-3年で、マネジメント論、人類の歴史、宗教、哲学、美学、倫理、未来、デジタル、Redmine、アジャイル、DevOps、経済学、組織行動、システム思考、人工知能と、(小説や漫画を除いても)結構雑食なほうだと思います。
一時期はもっと何かに絞ったほうがいいんじゃないかと思ったこともありました。それこそもっとスペシャリティを持つべきじゃないか、自信を持って「僕は○○なら誰にも負けません」と言えるようなものを作るべきじゃないかという不安感です。
しかし最近飽きるということを非常にポジティブに考えるようになりました。これにはある元上司と、ある知人の以下の言葉が元になっています。
お前はなんだかよくわからない状況にぽんっと突っ込んでも分からないなりに成果を出せる。だから使いやすい。
お前は何か新しく始めてもすぐにそこそこ良い感じのアウトプットを出してしまう。
片方は仕事、もう一方は完全にプライベートでしか関わりあいのなかった人たちからほとんど同じようなことを言われたわけです。飲み込みが早いということだとポジティブに受け取っています(真意は分かりませんが)。
つまり飽きるのは「だいたい分かった(気になる)」からのはずです。このくらいのことが分かったら自分が必要とするレベルの知識が身についた、これよりも深く知ったとしても(だんだん限界効用は逓減するので)それほど面白くない、そんなに役に立たない、と「飽きた」と感じたときに判断しているのです。そこででは次は○○の領域に、と勝手に越境が発生する。
これを続けていけば自分の求めているレベルのスペシャリティとジェネラリティに到達することが出来るんじゃないでしょうか。そして越境を重ねただけ散らばった知識や能力を、どこかの機会で有機的に結びつけることで新規性と価値を提供出来るはずです。当然そのためには単に飽きるだけではなく、次は何に取り組もうかという探究心が続かなければいけないのですが。
こう考えると飽きることに対して気軽になれ、気楽に越境を経験出来るのでは。
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@emorinaさんです。ちょうどこないだのDevLOVEプレイバック甲子園でRails Girlsのプレゼン聞きました!よろしくお願いします。
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